Jun16

アストロドラマ 大地の蠢き、天空の囁き。 (第一夜)

 僕たちが生まれた大地。その大地を明るく照らし、全てのものへ、そのエネルギーを分け隔てなく、そして無尽蔵に運んでくる太陽。全ての生物、全ての無機物、全ての惑星は、その光のもとで今も生命(いのち)を宿しながら、この宇宙の中で存在の光を放つ。僕たちは一人一人が一人一人の生命を中心にして日々生きている。そして、その一人一人の生命を中心にして、様々な人々、物、エネルギーが循環している。僕たち全ての中に、太陽が存在する。


 その太陽の光を浴びて、輝く星。それが月、神秘的な海のような妖しい光をたたえながら、時に優しい母のように、その光で僕たちを包み込む。毎夜姿を変えながら、月は移ろう。月は、僕たちをその優しい光で僕たちを包み込みながら、僕たちの魂の絆に気付かせてくれる。そして、ただただ優しく包み込む。僕たちは、そこに残る懐かしい情景を思い浮かべる。月は満ちる。しかし時にその姿さえも消して行く。


 太陽、そして月。人類の歴史が始まって以来、天空には多くの神々が宿ってきた。地上の歴史と同じように、天空の歴史は様々なドラマに溢れている。ここでは、それをアストロドラマと呼ぼうではないか。僕たちの住む大地の歴史を、ジオドラマと呼ぼうではないか。このアストロドラマとジオドラマの接点、つまりその二つの世界の対話の歴史は、多くの場合、神話や宗教に書き残されたのではないだろうか。


 今日から三夜にわたって、『アストロドラマ 大地の蠢き、天空の囁き』と題し、この天空と地上との対話の歴史ともいえる、「西洋占星術の歴史」についてお話しします。


 第一夜の今日は、占星術の誕生の歴史について紐解いていきましょう。占星術の胎動は、チグリス・ユーフラテス川地域に発展したメソポタミア文明に遡ります。紀元前8000年から7000年ごろ、最初にこの地域に定住したのがシュメール人でした。彼らは月の満ち欠けをもとに太陰暦を作り上げました。シュメール文化は、後に遊牧民セム族系のアッカド人(BC3000年ごろ)、バビロニア人(BC2000年)に引き継がれて行きました。そして、このバビロニアの人々は、ローマやギリシャの人々によりカルデア人と呼ばれるようになりました。


 このカルデア人達は、もともと遊牧民でした。遊牧生活は、定住生活に比べて、明日の生活がどうなるか分からない、そのような不確定要素の強い生活でした。そのような背景からか、彼らカルデア人は、天空の事象と大地の事象とのの関係を記載し、それらを活かそうとして行きました。このカルデア人の知恵こそが占星術誕生の大きな原動力となりました。


 その後、紀元前500年ごろには現在使われている12星座の原型が出来上がりました。12星座とは、つまり春分点(春分に太陽が位置する天文学上の位置)から、おひつじ座、おうし座、ふたご座、かに座、しし座、乙女座、てんびん座、さそり座、いて座、やぎ座、水瓶座、うお座の黄道上の12星座です。


 バビロニアで生まれた占星術は、その後、ギリシャ・ローマ世界に伝播します。初めてギリシャ世界に占星術がもたらされたのは、紀元前4世紀ごろのギリシア世界のコス島にたどりついたバビロニアの神官ベロッソスによってだといわれています。神官ベロッソスによって持ち込まれたバビロニアの占星術は、プラトンや、アリストテレスといったギリシアの哲学と融合し、人がよりよく生きる為にはどうすればいいか?ということを問う、個人のための占いが誕生しました。実は、個人の生きる意味を説いたギリシャ哲学にたどり着くまで、バビロニアでの占星術では、個人を占う占いはなく、あくまで社会を占うためのものでした。


 その後、アレキサンダー大王の東方遠征によって、ギリシア世界、オリエント世界、エジプト世界、果てはインド世界に及ぶまで文化の交流が活発化し、いわゆるヘレニズム時代が訪れます。


 この時代に、占星術は、大変大きな進歩を遂げました。ひとつには、エジプトのアレキサンドリアという都市で、多くの天文学者が精密な天文観測を行い、またそのなかで自然科学、宇宙科学がめざましい発展を遂げました。


 この時代で有名なのは、その後何世紀にもわたって支持された天動説を体系化したクラディウス・プトレマイオス(AD100-170)と、プトレマイオスによって書かれた『テトラビブロス』という占星術の教本です。この『テトラビブロス』は、西洋占星術の歴史の中でももっとも重要な書籍で、実質的に、占星術の体系はこのテトラビブロスによって完成されたといっても過言ではありません。


 さて、明日は、このテトラビブロスによって一度完成された占星術が、今度はキリスト教からの弾圧によって衰退を余儀なくされたこと、そしてしかしそれが滅びることなく、今度はイスラム世界で花開いたことをお話しましょう。


 それでは皆様また明日! 良い一日をおすごしください。

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